コラム
療育
2025.05.15
保育と療育の違いとは?療育を行う上での注意点についても解説
「保育」と「療育」、似たような言葉ですが目的や対象となる子ども、支援の内容には大きな違いがあります。この記事では、療育と保育の違いをわかりやすく整理し、それぞれが担う役割について丁寧に解説します。あわせて、療育を行う上で大切にしたい視点や注意点についてもご紹介します。子どもたちが安心して成長していける環境づくりのために、ぜひ参考にしてみてください。
目次
療育とは?定義と目的・支援内容を解説

療育とは
療育とは、発達に課題のある子どもを対象に、その子が持つ力を引き出しながら、日常生活や社会生活をサポートする支援のことです。
福祉的・心理的・教育的・医療的な側面から、多角的なアプローチを行い、一人ひとりの特性に応じた関わりを行います。
療育の目的と役割
療育の目的は、発達に課題のある子どもたちが自身の特性と上手く付き合いながら、日常生活や社会生活を自立して過ごせるように支援することです。身体の動かし方や勉強、コミュニケーション方法といった日常生活や集団生活で必要なスキルの習得を目指します。
また、個別の発達課題に応じたプログラムを作成し、子どもたちの能力を最大限に引き出します。
保育との違い

保育の定義
保育とは、主に0歳から就学前の子どもたちを対象に、日常生活の援助や基本的な生活習慣の習得を支援することを指します。食事や排泄、遊びなどを通じて健やかな成長を促す役割があります。
保育の目的
保育の主な目的は、子どもたちが安心して過ごせる環境を提供し、基本的な生活習慣や社会性を身につけることです。
集団生活を通じて、他者との関わり方や協調性を育むことも重視されます。
保育の支援内容
保育では、食事、排泄、着替えなどの基本的な生活支援や、遊びを通じた情緒の安定、集団活動による社会性の育成が中心となります。
絵本を読み聞かせたり、子どもたちが自由に遊べるように遊び場を整えたりするなど、様々な機会を提供します。
対象となる子ども

療育の対象となる子ども
療育は、発達に課題のあるお子さんを対象とした支援です。
身体の動かし方や言葉の発達、集団での関わり方などに困りごとが見られるお子さんや、発達障害の傾向があるお子さんなど、一人ひとり異なる特性に合わせたサポートが必要なお子さんが対象となります。
「発達に遅れがあるかもしれない」「育てにくさを感じている」といったご家族の不安に寄り添いながら、お子さんの可能性を引き出す関わりを行っていきます。
保育の対象となる子ども
保育は、主に0歳から小学校就学前(満5歳)までの乳幼児と、小学校入学前(満3歳から5歳)の子どもが対象です。
保育所は、保護者が仕事や病気などにより、家庭での保育が難しい場合に、保護者の委託を受けて保育する児童福祉施設です。
療育を行う施設と支援内容

児童発達支援事業所
児童発達支援事業所は、0歳から小学校に入学する前までの、療育を必要とするお子さんを対象とした支援施設です。日常的動作の練習や、集団の中で安心して過ごせるようになるための関わりを大切にしながら、日々の療育を行っています。
より身近な療育を提供する場として、各地域に数多く存在します。
児童発達支援センター
児童発達支援センターは、0歳から小学校に入学する前までの、療育を必要とするお子さんが、身近な地域で安心して療育を受けられる施設です。
定期的に通いながら、自立に向けた力や日常生活に必要な基本的な動作、そして集団生活に慣れるためのコミュニケーション力などを育んでいきます。
児童発達支援事業所との違いは、児童発達支援事業所が提供するサービスに加えて「地域支援」や「医療的なサポート」の機能もあわせ持っている点です。療育だけでなく、ご家族への助言やサポートを行ったり、保育園や学校、他の支援機関からの相談に対応したりと、地域の支援体制を支える中核的な役割も担っています。
また、児童発達支援センターには主に「福祉型」と「医療型」の2種類があります。福祉型では主に療育中心の福祉サービスを提供し、医療型ではそれに加えて医師や看護師などによる医療的ケアを受けることも可能です。
保育所等訪問支援
保育所等訪問支援は、療育を必要とするお子さんが保育所や学校などで安心して集団生活を送れるように支援するサービスです。
保護者の依頼に基づき、専門の支援員が保育所・幼稚園・小学校・学童などを訪問し、お子さんの様子を観察します。「友だちとうまく遊べない」「自傷や他害行為がある」といった困りごとがある場合に利用され、原因を分析したうえで、より過ごしやすくなる方法を一緒に考えていきます。
対象となるのは、保育所や学校などに通う18歳までの子どもです。診断や障害者手帳の有無に関係なく、支援が必要と判断されれば利用できます。
放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、小学生から高校生までの療育を必要とするお子さんが、放課後や休日・長期休みに利用できる福祉サービスです。
家庭や学校だけでなく、安心して過ごせる「第3の居場所」として、生活能力の向上や社会とのつながりを育むためのプログラムが用意されています。
児童発達支援管理責任者が作成する個別支援計画に基づいて提供され、自立に向けた支援や日常生活の練習などが行われます。
対象は、原則として6歳〜18歳の就学児童で、障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかを所持しているお子さん、または医師の診断書により発達の障害が認められたお子さんです。
居宅訪問型児童発達支援
居宅訪問型児童発達支援は、医療的ケアが必要なお子さんや重い障害があって外出が難しいお子さんのご自宅を訪問し、支援を行うサービスです。遊びを取り入れながら、日常生活に必要な基本的な動作の練習や生活力を育てるためのサポートを行い、お子さんの発達を無理なく促していきます。
ご家族と一緒に立てた目的や目標に沿って、一人ひとりに合わせた支援を行うのが特徴です。看護師が訪問するため、支援の途中で吸引などの医療的ケアにも対応でき、安心してご利用いただけます。
福祉型障害児入所施設
福祉型障害児入所施設は、身体や知的、精神(発達障害を含む)に障害のあるお子さんが入所し、日常生活の練習や自立に向けたサポートを受けられる施設です。将来的には地域で自分らしく暮らしていけることを目指していきます。
入所の対象となるのは、障害者手帳の有無に関わらず、市区町村の保健センターや医師、児童相談所などから「療育の必要がある」と認められたお子さんです。
ご家族への支援も大切にしており、「障害の受け止め方」「きょうだい支援」「仕事と育児の両立」「日中活動の場の確保」など、家庭への復帰に向けた取り組みも行われています。
療育の仕事に携わる職業

児童発達支援管理責任者
療育を必要とする子どもに対する個別支援計画を作成し、その実施を統括する専門職です。子ども一人ひとりの発達状況や課題に応じて「何を、どのように支援するか」を明確にし、スタッフへの指導や助言、保護者との連携を通じて、支援全体の質を高めていきます。
この個別支援計画には「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」という5つの領域を含めることが義務づけられ、子どもの発達を多面的・包括的に支える視点が重視されています。
この5領域に基づいた療育では、発達のバランスが整いやすくなるだけでなく、子ども自身の自信や集団での過ごしやすさにもつながっていきます。 こうした視点をもとに、一人ひとりに合った支援計画を立てていくことで、子どもにとって安心できる、前向きな療育を提供することができます。
保育士・児童指導員
療育を必要とする子どもが、日常生活や集団生活に必要な力を身につけられるよう援助・指導を行います。5領域を意識しながら、着替えや食事などの生活習慣、友だちとの関わり方、手先を使った遊びや言葉のやりとりなど、日々の活動を通じて子どもの成長を支えます。
看護師
医療的ケアが必要な子どもたちに対し、日々の健康管理や緊急時の対応を行います。特に「健康・生活」領域に関わる支援が中心で、他の専門職と連携しながら、安心して過ごせる環境づくりを支えます。
言語聴覚士(ST)
言葉やコミュニケーションに課題がある子どもたちに対し、「言語・コミュニケーション」領域に重点を置いた支援を行います。個別訓練や遊びを通して、言語理解や表現力の向上を目指します。
作業療法士(OT)
日常生活動作や手先の使い方に課題がある子どもに対し、「運動・感覚」や「健康・生活」領域を中心に支援します。遊びや作業を通じて、手指の器用さや身のまわりのことの自立を促します。
理学療法士(PT)
運動機能に課題がある子どもたちに対し、「運動・感覚」領域を中心に、歩行や姿勢、筋力の改善など身体的な支援を行います。遊びや運動を取り入れながら、身体的な支援を行います。
公認心理師・臨床心理師
情緒や社会性に不安がある子どもに対し、「認知・行動」や「人間関係・社会性」領域を意識した支援を行います。個別カウンセリングや集団活動を通じて、心の安定や対人関係の育ちを支えます。保護者へのサポートも大切な役割です。
保育士が療育現場で必要とされる理由

療育の現場では、保育士の存在がとても重要です。これまで保育の現場で積み重ねてきた経験やスキルが、療育でもそのまま活かされる場面が多くあります。
保育の経験がそのまま活きる:子どもの発達理解と柔軟な対応力
保育士は、子どもの発達段階を理解しながら、日々の保育の中で一人ひとりに合った関わりを積み重ねています。
今この子にとって何が必要かを考え、柔軟に対応する力は、発達に特性のある子どもたちへの支援でも大いに活かされ、少しの変化にも気づける観察力や、子どもの反応に合わせて関わり方を調整できる柔軟さは、療育の現場においても大きな強みとなります。
専門職(OT・STなど)との連携ができる力
療育の現場では、作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)などの専門職と連携し、チーム一丸となって支援を行うことが求められます。
保育士は、子どもの日常の様子や変化を細かく観察し、その情報をわかりやすく伝える重要な役割を担っています。保育士が提供する観察結果や情報は、専門職が効果的な支援を行うための基盤となり、チーム内での連携をスムーズにします。
子どものペースを大切にする姿勢
保育士は、子ども一人ひとりのペースに合わせた関わりを大切にしています。
「今できること」に寄り添い、焦らせず無理をさせないその姿勢は、療育現場でも大切なポイントです。子どもが安心して過ごせる環境を整えながら、少しずつその子のペースで「できること」を広げていくサポートを行うことが可能です。
療育におけるアセスメントの重要性

アセスメントとは?
アセスメントとは、人やものごとを客観的に評価・分析することを意味する言葉です。
療育におけるアセスメントとは、療育を受けるお子様の環境や行動などの情報を収集し、分析をすることを指します。支援方針を決めるにあたってとても重要なプロセスです。お子様本人の発達状況だけでなく、家族や周囲の環境を適切に把握し、本人と家族の意向を丁寧にくみ取ることが重要とされます。
アセスメントを欠いた療育が招く二次障害のリスク
アセスメントを欠いたままで療育を行うと、子どものニーズに合った支援ができなくなり、その結果として「二次障害」を引き起こす可能性があります。適切な支援が行われないことで、社会性の問題や自己肯定感の低下、学習面での困難が進行するなど、もともとの問題に加えて新たな問題が発生し、子どもの課題がさらに複雑化することがあります。
正確なアセスメントをすることで、子どもの強みや課題を把握し、個別の支援を行うことで、より良い療育が実現します。
アセスメントについて詳しくはこちら→https://co-mii.com/column/157/
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