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【2024年報酬改定】保育所等訪問支援とは?報酬や要件、流れについてわかりやすく解説


保育所等訪問支援事業所は近年増加傾向にあります。児童発達支援や放課後等デイサービスを運営する事業者が新たに保育所等訪問事業に参画するケースも増えてきています。今回の記事は事業者に向けて、保育所等訪問支援に新たに取り組むために最初に参考にする記事を目的として作成しました。該当の事業者の方は、ぜひ最後までお読みください。

保育所等訪問支援とは?2024年報酬改定に関してや要件、流れについてわかりやすく解説

保育所等訪問支援とは?

保育所等訪問支援とは、平成24年に創設されたもので、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの障がい児通所支援の一類型にあたるサービスです。保育所等に訪問することによって、事業所への通所では見られにくい集団場面で気づかれる発達上の課題に対する支援を行うことで、インクルージョンを推進する役割としても期待されています。

保育所等訪問支援の申請者

保育所等訪問支援の申請者は保護者です。利用するにあたっては保護者から市町村に給付費申請を行う必要があります。子どもが通っている保育所等からや事業者からの申請は行うことができません。

保育所等訪問支援の対象児

対象児は保育所等を利用していて、集団生活を行うにあたって支援を要する子どもです。利用にあたっては、医学的な診断や障がい者手帳の必要はなく、児童発達支援や放課後等デイサービスを利用している子ども、過去に利用していた子どもも保育所等訪問支援を利用することができます。

保育所等訪問支援の訪問先

訪問支援の場所は、児童福祉法で「保育所やその他の児童が集団生活を営む施設として厚生労働省令で定めるもの」と定義されています。具体的には、以下のような施設です。

保育所/幼稚園/認定こども園/小学校/特別支援学校/中学校/高校/乳児院/児童養護施設/放課後児童クラブなど

保育所等訪問支援の訪問頻度・支援時間

保育所等訪問支援の訪問頻度は一般的には2週間に1回程度が想定されていて、1回あたりの支援時間は2時間~半日程度です。訪問頻度や支援時間に関しては子どもの支援ニーズや保護者のニーズ、保育所等の環境などを踏まえ柔軟な対応が求められます。ガイドライン上、訪問頻度に関する規定はありませんが。令和6年報酬改定では、訪問支援時間が30分未満の場合 算定不可となっています。

保育所等訪問支援の人員配置基準

保育所等訪問支援事業所には、管理者、児童発達支援管理責任者、訪問支援員の配置が必要です。これらを1人の職員がすべて兼務することはできません。

保育所等訪問支援では、保育所等に単独で出向き支援をする必要があるため、訪問支援員には相当の知識と経験が必要とされています。ニーズによっては複数人の職員で訪問支援を行うケースもあり、柔軟な対応が必要です。

また、「訪問支援員特別加算」を基本報酬に加え算定できる要件として以下のような配置基準が示されています。

・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士若しくは保育士の資格を取得後又は児童指導員、児童 発達支援管理責任者、サービス管理責任者若しくは心理指導担当職員として配置された日以 後、障害児に対する直接支援の業務、相談支援の業務又はこれに準ずる業務に 5 年以上従事し た者 

・障害児に対する直接支援の業務、相談支援の業務又はこれ に準ずる業務に 10 年以上従事した者

「児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準等の制 定に伴う実施上の留意事項について」(平成 24 年 3 月 30 日障発 0330 第 16 号厚生労働省社会・援護局障 害保健福祉部長通知)より引用」

保育所等訪問支援の報酬体系・令和6年報酬改定での変更点

保育所等訪問支援の報酬体系は、令和6年度障害福祉サービスの報酬改定では、以下のように変更・新設されています。

基本報酬

  • 保育所等訪問支援給付費: 現在の単位数 1035単位 → 変更後 1071単位

保育所等訪問支援の主な加算

主要加算一覧

  • 初回加算: 現在の単位数 200単位 → 変更なし
  • 訪問支援員特別加算: 現在の単位数 679単位 → 変更後 850単位(10年以上)/700単位(5年以上10年未満)
  • 家庭連携加算: 1時間未満は187単位、1時間以上で280単位 → 変更後 1時間未満は200単位、1時間以上で300単位
  • 特別地域加算: 現在の所定単位+15% → 変更なし
  • 利用者上限負担額管理加算: 現在の単位数 150単位 → 変更なし
  • 福祉介護職員処遇改善加算: 現在の所定単位×加算率 → 変更後 加算率の見直し

保育所等訪問支援の主な減算

  • 支援計画が作成されていない場合
    • 減算が適用される月から2ヶ月目まで ×70%
    • 3か月以上連続して減算の場合 ×50%

   → 変更後 減算率の見直し

  • 一人の訪問支援員が複数の児童に支援した場合 ×93%

   → 変更なし

  • 身体拘束廃止未実施減算: 現在の単位数 5単位/日 → 変更なし

新設された加算

  • 多職種連携支援加算
    •   関係機関との連携を深め、児童の包括的な支援を実現するために新設された加算
    •   単位数: 1回につき200単位を加算。
  • ケアニーズ対応加算
    •   関係機関との連携を深め、児童の包括的な支援を実現するために新設された加算
    •   単位数: 1日につき120単位を加算。
  • 強度行動障害児支援加算
    •   内容: 強度行動障害を持つ児童に対する支援を行うために新設された加算。
    •   単位数: 1日につき200単位を加算。
  • 関係機関連携加算
    •   内容: 関係機関との連携を深め、児童の包括的な支援を実現するために新設された加算。
    •   単位数: 1回につき150単位を加算。

保育所等訪問支援の事業所数の推移

保育所等訪問支援事業所の数は右肩上がりの傾向にあり、2021年には1930事業所となっています。

保育所等訪問支援の開業方法

続いては、保育所等訪問支援の開業までの流れを要所に絞って解説いたします。

①市町村への相談

まずは、所属している市町村の担当者に指定申請をしたい旨の相談をしましょう。平成30年以降「障がい児福祉計画」により市町村も保育所等訪問支援事業所数の目標を設定することが義務付けられています。訪問先となる保育所等についてなど、地域の実情をあらかじめ相談して認識しておきましょう。

②都道府県等への指定申請

一般的に、指定申請は都道府県に行います。期日までに必要書類を整えておく必要があります。必要書類については、該当の自治体に確認しておきましょう。「訪問支援員特別加算」や「特別地域加算」などの加算を取得するためにも都道府県等に届出が必要です。

また、都道府県によって指定の審査を実施する頻度が異なるため、申請を行う際にはスケジュールに余裕を持つようにする必要があります。スケジュールやその他の不明点を含め都道府県担当者としっかりと相談することが大切です。

保育所等訪問支援が行われるまでの一般的な流れ

保育所等訪問支援が行われるまでの一般的な流れをご紹介します。

①保護者が市町村の担当窓口に相談をし、相談支援事業所が選定される。

②相談支援事業所は訪問先と連携をとり、実態把握を行い訪問が必要と判断した場合には相談支援計画を作成し、保護者の承認を得る。

③相談支援事業所は対象児童のアセスメントを行い、支援会議を開いた後に、支援利用計画の原案を作成し、市町村から支給決定を受ける。

④受給者証が保護者の元に届いたら、保育所等訪問を実施する事業所の児童発達支援管理責任者が個別支援計画書を作成する。

⑤事業所と保育所等、保護者で日程調整を行い、訪問日を決め、訪問を開始する。

保育所等訪問支援を行う際のポイント

保育所等訪問支援を行うにあたっての重要なポイントを各項目ごとに解説いたします。

アセスメント

子どもが集団生活をする保育所等への訪問支援の場合は、通所支援よりも子ども一人ひとりの状況に合わせた多面的なアセスメントが求められます

支援開始前に保育所を訪問し、現場の状況を把握することは、計画的かつ効果的な支援を実施するために極めて重要です。これにより、訪問先のスタッフとの関係構築を始め、子どもたちやその他の関係者とのコミュニケーションを図ることができます。このプロセスは、支援の質を高め、より良い成果をもたらすための基盤となります。

アセスメントについてはこちらの記事でも解説しています。

ニーズの把握

保育所等訪問支援では、保護者と子どものニーズを把握することに加え、訪問先のニーズ理解も重要です。良好な関係を構築するには、訪問先にとってもメリットがあるものと感じてもらうことが不可欠です。個別支援計画の作成において、訪問先の担当者との協働は必須です。そのためにも、良好な関係構築をしましょう。

個別支援会議

個別支援会議については、保護者、事業所の児童発達支援管理責任者と訪問支援員、訪問先の担当者と責任者が出席して行うことが望ましいとされています。流れとしては通所支援の場合と同じく、児童発達支援管理責任者が作成した原案に沿って進行します。

個別支援計画書

個別支援計画書について、基本的には通所支援で用いている様式を用いても問題ありません。追加して訪問先のニーズや、訪問先での保育計画、教育計画などを加味して原案を作成する必要がある場合もあります。

通所支援の個別支援計画書の作成方法についてはこちらの記事でも解説しています。

保育所等訪問支援と放課後等デイサービス・児童発達支援は同日利用できる?

基本的に同日利用は可能ですが、自治体によって判断が別れる場合もありますので、所属の自治体に確認するようにしましょう。また、時間帯に関しては重複しないようにする必要がありますので注意しましょう。

まとめ

保育所等訪問支援に行政の支援があることは、インクルージョン(すべての子どもが共に学び成長すること)を推進することの大切さや必要性を示しています。
放課後等デイサービスや児童発達支援などの通所支援を主とする事業所が新たに取り組むケースも増えてきています。訪問支援は通所支援よりも専門性が高く求められるため、事業所はこの分野に深い理解と覚悟を持って取り組む必要があります。本記事が、より多くの事業者が子どもたち一人ひとりのニーズに応じた質の高い支援を行うための参考となり、訪問支援事業所が増えれば幸いです。

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