法改正

令和6年度報酬改定(法改正)を徹底解説!放課後等デイサービス・児童発達支援における重要ポイントまとめ


厚生労働省・こども家庭庁の障害福祉サービス等報酬改定検討チームから、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(法改正)における主な改定内容が発表されました。

本記事では、今回の報酬改定(法改正)によって放課後等デイサービス・児童発達支援の運営に関わる重要点を解説します。

なお、現時点(2024年3月5日)で発表されている概要は(案)の段階であり、

今後変わる可能性もあるため、最新の情報については厚生労働省の障害福祉サービス等検討チームの議事録等をご確認下さい。

令和6年度報酬改定(法改正)を徹底解説!放課後等デイサービス・児童発達支援における重要ポイントまとめ

令和6年度障害福祉サービス報酬改定(法改正)の大枠

まずは、今回の報酬改定(法改正)によってどんな方向性で見直しや変更が図られたのか、大枠から解説をしていきます。放課後等デイサービス・児童発達支援に関する点では、大きく分けて3つのポイントから方針の変更が公表されています。

①質の高い発達支援の提供

1つ目は「質の高い発達支援の提供」という観点です。

令和6年度2月6日に障害福祉サービス等報酬改定検討チームから発表された資料によると、下記のように明記されています。

適切なアセスメントと子どもの特性を踏まえた総合的な支援・専門的な支援や関係機関との連携強化を進め、個々の特性や状況に応じた質の高い発達支援の提供を推進する

厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第45回(R6.2.6)資料1

この改定の背景には、放課後等デイサービス・児童発達支援事業所の急増により、質の低下が社会的な課題となっている現状があります。

具体的には、一部の事業所では習い事のような運営体制がとられていたり、個別支援計画書がずさんな状態で支援が提供されている事例が報告されています。今回の方針は、このような状況に対応し、業界全体の支援の質の低下にメスを入れる目的だと考えられます。

詳細は後半で解説しますが、質の高い発達支援の提供という新たな基準のもと、5領域の支援の必須化、支援プログラムの公表などの運営条件が加えられました。

②支援ニーズの高い児童への対応

2つ目は「支援ニーズの高い児童への対応」という観点です。

医療的ケア児や重症心身障害児、強度行動障害を有する児をはじめ、より専門的な支援が必要な障害児への支援の充実を図り、障害特性に関わらず地域で安心して暮らし育つことができる環境整備を進める

厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第45回(R6.2.6)資料1

支援が必要な児童の多様なニーズに応えるため、医療連携体制加算の単位数が大幅に増加されたり、入浴支援の加算が新設されたりなど、多くの加算制度が見直されました。

③家族支援・地域を包括しての支援の充実

3つ目は、家族への相談援助等の充実や、地域の保育所等と関わりを持ち、インクルージョンの取り組みを充実させていくことなどの観点から見直しが計られました。

養育支援や預かりニーズへの対応など、保護者・きょうだいへの家族支援を推進し、家族全体のウェルビーイングの向上を図る

保育所等への支援を行いながら併行通園や保育所等への移行を推進するなど、インクルージョンの取組を推進し、障害の有無に関わらず全てのこどもが共に育つ環境整備を進める

厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第45回(R6.2.6)資料1

具体的な変更としては、家庭との連携を促進するために家庭連携加算の単位数の見直しが行われたり、関係機関との協力を促進するために関係機関連携加算が新設されたりといった変更がありました。  

家族支援加算についての詳細はこちらの記事をご参照ください。

  

基本報酬に関わる変更点

ここからは、具体的に変更のあった内容について解説をしていきます。

支援時間区分の設置

基本報酬に関わる点として、支援時間に区分が設けられました。

基本報酬について、極めて短時間の支援(30分未満)は算定対象から原則除外するとともに、個別支援計画に定めた個々の利用者の支援時間に応じた評価が可能となるよう、支援時間による区分を設ける

厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第45回(R6.2.6)資料1

支援時間による区分は下記の3区分になります。

①30分以上~1.5時間以下②1.5時間超~3時間以下③3時間超~5時間以下

放デイの場合は平日は②までの算定が可能で、学校休業日は③まで算定が可能です。

どの時間区分で支援を行うかによって基本報酬に差がでてくることになりますので、事業所内でどの区分での支援を行うか、方針を決めておく必要があります。

また、5時間を超えた支援(平日の場合放デイでは3時間を超えた場合)では延長支援加算も取得できます。なお、送迎をしている時間は支援時間内に含まれないのでご注意下さい。

児童指導員等加配加算の改定

児童指導員等加配加算では今までは必要とされる員数に加え専門職、児童指導員等、その他従業者の配置(常勤換算)によって算定されていましたが、今後、雇用形態や経験年数に応じて評価されることになりました。

常勤専従経験5年以上75~187単位/日
常勤専従経験5年未満59~152単位/日
常勤換算経験5年以上49~123単位/日
常勤換算経験5年未満43~107単位/日

※その他の従事者を配置の場合 36~90単位/日

厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第45回(R6.2.6)資料1より作成

専門的支援加算・特別支援加算の改定

専門的支援加算は今までは理学療法士等の配置によって加算の評価をされていましたが、今回の改定では体制加算と実施加算という新たな枠が設けられました。

体制加算は今までと同じように、専門的人材の配置に算定できる加算であり、実施加算は専門的人材が個別・集中的な支援を計画的に行った場合に算定できる加算となりました。

今までと同じ支援を行っていても、支援時間や配置、経験年数に応じ加算等に変更があるため、同じ報酬をもらえるとは限りません。よく条件を確認し、現状の支援だと改正後の報酬が上がるのか下がるのか、細かく確認する必要があります。

報酬改定(法改正)で新たに義務化される内容

総合的支援の方な支援の推進・5領域での支援の義務化

新たに設けられた方針の中で一番大きな変化が、5領域を全て含めた総合的な支援を提供することが運営基準として設けられたことです。

5領域とは「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」の分野のことを指します。

事業所で行う支援内容を、必ず5領域とのつながりを明確化して、支援プログラムを作成しなければなりません。また、作成した支援プログラムは公表を求めると書かれており、未実施の場合には所定単位数の85%が減算されます。(※適用は令和7年4月1日から)

5領域での支援は、個別支援計画書にも反映させる必要があり、今後5領域に対応したフォーマットが提供される可能性もあると公表されています。

5領域での支援の具体的な方法についてはこちらから。

報酬改定(法改正)で拡充される加算・新設される加算

関係機関連携加算

質の高い発達支援の提供を推進していくための1つの方針として、子どもが関わる各機関との相互連携をより強化することが重視されました。今までは主に個別支援計画書を作成する際や就学先・就職先と連絡調整をする時のみが対象とされていましたが、その場合以外でも保育所や学校等と情報連携をすることで加算を取得できるようになりました。また、児童相談所や医療機関等との情報連携でも取得が可能になりました。

関係機関連携加算についての詳細はこちらの記事をご参照ください。

【新設】事業所間連携加算

令和6年度報酬改定(法改正)で新たに設置されたのが事業所間連携加算です。セルプランで複数事業所を併用する児について、事業所間で連携をし、子どもの支援状況の共有など行った際に評価をするという内容です。どのような連携をすれば加算が取得できるかの条件はまだ明確になっていない部分もありますが、会議の開催や家族への相談援助の記録などが残されていることは重要な条件になるでしょう。

家族支援加算(旧 家庭連携加算)

家族支援加算(旧 家庭連携加算)は、家族支援の充実という観点から見直しが計られました。

事業所内相談支援加算と統合され、オンラインによる相談援助に関しても加算の対象になることが明記されました。また、きょうだいに関しても相談援助等の対象であることが示され、家族全体のウェルビーングの向上に寄与することが重要視されました。

家族関連で新設された加算には、子育てサポート加算があります。保護者に支援場面の観察や参加等の機会を提供し、子どもとの関わり方を相談援助することで加算対象となります。

医療的ケア児・強度行動障害児への支援加算

支援ニーズの高い児への支援を充実させるための加算も多く拡充されました。

医療連携体制加算(Ⅶ)は今までが100単位/日だったのから、250単位/日に大幅に見直されました。また、主として重症心身障害児を受け入れる事業所においても算定可能になりました。

送迎加算については子どもの医療濃度もふまえて評価されることとなり、1回あたりの単位数は全体的に上がっています。

強度行動障害児に対する支援は、専門人材の支援の下、支援を行った場合の評価が見直されました。加算開始から90日間は+500単位の条件が設けられるなど、新たに支援ニーズの高い児を受け入れる施設に対しては評価をするという方針が見られます。

その他にも、ケアニーズが高い児への支援は細かく改定がされています。

必ず報酬改定の概要を確認し、自身の運営する事業所で取りこぼしがないか、条件を満たしているかを確認するようにしましょう。

まとめ

以上、令和6年度障害福祉サービス報酬改定における、放課後等デイサービス・児童発達支援に関わる改定内容を解説をしてきました。

全体を通して、放課後等デイサービス・児童発達支援での支援の質を高めようという方針の下、多くの見直しが行われたことが分かると思います。

今後の事業所の安定運営においては、5領域への対応によって減算を防ぐこと、細かく策定された加算を取り逃しのないようにすることが重要だと思われます。

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報酬改定(法改正)の内容は、随時厚生労働省HPにて更新されていきますので、記事のみの情報だけではなく最新情報も十分に追いかけるようにし、安定した事業所運営を実現させていきましょう。

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