「うちの子は、どうして相手の立場に立って考えられないのだろう……」
こうした悩みを抱える保護者の方や支援者の方は多いと思います。今回は、そんな子どもに対して効果的な「療育」の方向性を、私の15年以上の現場経験からお伝えします。

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なぜ「相手の立場」が分からないのか？多く見られる行動とその背景

まず、多くの相談で挙げられる「相手の立場に立てない」子どもの行動には、こんなものがあります。

• 一方的に話しすぎる
• 空気を読まずに言いたいことを言う
• 会話の途中で割り込む
• 相手の気持ちを考えず言葉を発する／行動する
• 冗談や皮肉が通じず、暗黙のルールが理解できない

こうした行動が続くと、友だちや大人との関係でトラブルになりやすく、将来的に人間関係や社会生活での困難につながるリスクもあります。

では、なぜこのような「他者の立場に立てない」状態が起きるのでしょうか？
主な要因として、次の2つが考えられます。

①脳の働きの面　「ミラーニューロン・システムの機能不全」

「ミラーニューロンシステム」とは、人が他人の動作や表情を見たとき、自分が同じことをしているかのように脳の中で反応する神経のネットワークのことです。このシステムがうまく働かないと、他人の行動や感情を理解することが難しくなります。
誰かの機嫌や困っている様子を「自分ごと」として察することが難しいケースです。

②発達の面　「心の理論の未成熟」

「心の理論」とは、「他の人は自分とは異なる考えや感情を持つ」という理解をする能力です。
たとえば、「ある子どもが箱にボールを入れて部屋を離れた後、別の人がそのボールを別の箱に移して戻ってきたとき、最初の子どもはどこを探すか」という問題を出した時に、心の理論が育っている子なら「元の箱」と答えますが、未成熟な子は「移された箱」を答えてしまうことがあります。
こうした認知のズレは、特に自閉スペクトラム傾向のある子どもに多く見られるとされています。

他者理解を育てる「療育アプローチ」

肝心なのは、「なぜできないか」を理解したうえで、子どもが他者の立場を感じる練習をすることです。ここでは、家庭や放デイ・療育施設で取り入れやすい活動を３つ提案します。

① ジェスチャーゲーム

出題者がジェスチャーでお題を表し、他の子どもがそれを当てるゲームです。
相手の体の動きや表情、ジェスチャーから「何を伝えようとしているのか」を読み取る練習になるため、相手の気持ちや意図を想像する力を育てやすくなります。
ヒントが必要な場合は、「動物」「動作」「生活場面」など大まかなカテゴリーを伝えるとよいでしょう。

②答えをマッチングするゲーム

2人組で、それぞれカードのお題に対してイメージを思い浮かべてから、一斉に答えを言い合います。たとえば「赤い果物」と聞かれたら、それぞれが思い浮かべた果物を答えて、一致すれば成功です。
このゲームでは「他の人は何を考えているか」を想像することが必要なため、他者の考えや気持ちを意識するきっかけになります。

③目隠し案内ゲーム

1人が目隠しをし、もう1人がその子を安全にゴールまで誘導するゲームです。
目隠しされている子の不安や頼る気持ちを想像することで、「自分だったらどう感じるか」「今どんな気持ちか」を考える練習になります。
誘導役は、やさしく声かけしたり、身振りを工夫したりして、安心感と信頼感を育むようにします。

大切なのは「継続」と「丁寧な観察」

こうした療育的な活動を行ったからといって、すぐに劇的な変化が起きるわけではありません。
しかし、継続していくことで、少しずつ「他者理解」の力が育っていきます。

• 相手の言動や表情に目が向くようになる
• 会話の前後関係や相手の意図を考えるようになる
• 冗談や言葉の裏にある気持ちに気づきやすくなる

療育を行う大人は、子どもの変化を丁寧に観察し、その過程を記録することが大切です。また、「できた」「できなかった」に一喜一憂せず、長い目で見守る姿勢が必要です。

まとめ

子どもの「他者の気持ちを理解する力」は、その子の脳の特性や発達のタイミングに左右される部分があります。だからこそ、大人が焦らず、根拠をもって支援を設計することが大切です。
そして、療育を「特定のスキルを教える場」ではなく、「子どもの心と感覚を育て、社会性を育む場」として考えていきましょう。

出典：
【子育て】相手の立場に立って考えられない子の療育方法
https://www.youtube.com/watch?v=qW7XLZiHoro